何事もそうであるが、それは突然にやってきた。
「婚約指輪が欲しい」と、相方が僕にのたまう。
「コンニャクでよければ今すぐにでも」そう答える僕に、相方の馬乗りパンチが突き刺さる。
どうやらギャグが気に入らなかったらしい。
それにしても僕は困った。結婚しようとは思っているものの、資金を貯めるのにも地獄車のような自転車操業の毎日。
いったいどこにそんな金があるというのか?給料三か月分といえば、ペヤング10年分くらいに相当する。
しかしここで渋い顔を見せると、今度はカカト落としが降って来る事は目に見えていたので、僕は笑顔で「前向きに検討」と答える。いつのまにこんなオトナになってしまったのか。

数日が経った。
相方がパソコンの前で僕を呼ぶ。
何事かと思い覗き込むと、そこには煌く宝石の数々が。
相方の瞳もスッカリ煌いており、僕はその視線に軽い眩暈を覚える。
人生のトピックが走馬灯のように駆け巡り、これから襲って来るであろう大怪獣リボバラインの姿が目に浮かぶ。 倒れそうになりながら僕は聞く「・・これは?」
「婚約ゆ・び・わ♪」今回はコンニャクとはさすがに言わなかったが「・・値段は?」

そこにはn@tsukoさんのHPがあった。
何でも指輪のオーダーメイドを行っているとのこと。
限定品・オリジナルに弱い僕は、フラフラと引き込まれる。よく見るとデザインも僕好み。
早速見積もりをn@tsukoさんにお願いしてみることにした。
お返事をすぐにいただく。
すると意外にも大怪獣リボバラインではなく、カプセル怪獣ボーナスバラインを倒せば良さそうな金額ではないか。
そうと決まると話は速い。

美術の試験で真っ白の紙を差し出し「シンプルイズベスト」で貫き通した僕である。
指輪のデザインなど不可能。
望むことは1つ。
「いつでもどこでも付けていられる」 相方は「ダイヤが全体に散りばめられていること」
何しろ一生の記念になるものなので、デザインについての検討は慎重になる。
この間n@tsukoさんも丁寧に、じっくりと話にお付き合い下さり、大まかな骨子はすぐに決まった。
あとはn@tsukoさんとのメールで概要を固めていく。

 

 

指輪の中に入れるメッセージを考えていたとき、僕は横文字じゃあいい言葉が見つからない。
「漢字でメッセージを入れることってできないのかな?」
早速n@tsukoさんに伺ってみる。聞いたことないし、きっと無理だろうなあと思っていたところ 「レーザーを使うことによって漢字を入れることも出来ます」との意外な返事。
何でも指輪の裏側に好きな文字を彫り込めるらしい。全く僕は知らなかった。
これは結構難儀である。言葉はハッキリと意味を持ったまま残るから。
二人で話し合い、縁起の良い四字熟語と二人の名前を入れようということになった。
「どんなのが良い?」間違っても「焼肉定食」などとは言えない。 目潰しを食らわされるだろう。
鴛鴦夫婦・夫婦随唱・偕老同穴など縁起の良さそうな単語が候補に上がるのだが、どれもシックリ来ない。どうにもこうにも重たすぎる。胃もたれを起こしてしまいそうだ。
明るく楽しく激しく、磯野家の空気を漂わせる我が家としては 「夫婦漫才」でどうか?と前歯をヘシ折られる覚悟で言ってみたところ、 「それでイイよ」と相方の言葉。
めでたく決定である。
これを伝えた時のn@tsukoさんのリアクションは、今でも忘れられない。

そして指輪が出来上がった。
僕のは幅5mmの太くガッシリしたホワイトゴールドのリング。シンプルイズベストで綺麗に磨き上げられた平打ちリングだ。
これならばいつでもどこでも、場所を選ばず付けていることが出来るのが嬉しい。
相方のはご希望通りリング全体に細やかな天然ダイヤが埋め込まれており、実に煌びやかである。
「キラキラ光るたびに音がしそう」なくらいまばゆく輝いている。
相方も実に嬉しげで、ヒマさえあれば取り付かれた様に眺めている。
やはり女性には宝石。怪獣ボーナスバラインをやっつけるのは大変だが、こんなに喜んでくれるなら悪くないなと思う。
n@tsukoさん、僕たちの変な要求に辛抱強く応えてくれて、そしてステキなリングを本当にどうもありがとうございました!
たぶんまた相方がなにかたくらんでいると思いますが、そのときにはまたよろしくお願いします。

 

(千代田区 I.Y.さん 26歳 会社員)

 

はじめてのお打ち合わせ、何度も交したメール・・・と、とにかく楽しく関わらせていただきました。
フィアンセのTさんの念願だったエタニティを、ご婚約指環としてお作りいただけて、 私もうれしく思っております。
シンプルな平打ちとエタニティが、漢字でお名前をお入れしたことで、個性豊かに仕上がり、まさにお二人だけのペアリングになった瞬間を見た思いがしました。

今後とも末長く楽しいおつきあいを、心から願っております。
 by n@tsuko