「チェーンの話」

 

最近は42cmというものも出回ってきたようだが、ほとんどの宝石店で売られているネックレスは、40cm、50cm、60cmと、長さが決まっている。
首の太さや肩にかけてのラインなど、人によって様々なはずなのに、プチペンダントといえば40cmのワンサイズしかないものだから、それを薦められるがままに買うしかなかったのだろう。
首輪のように窮屈に見える人もいれば、ペンダントトップがチェーンに引っ張られて、浮き上がってる人も見かける。

ブレスレットにしてもしかりで、既製は18cmとされているので、金具の取り外しもやっとな人、また、長過ぎて手の甲あたりまで垂れ下がってしまう人もいるはずだ。
カーディガンを脱いだ後、気がつくとなくなっていた・・・というのもあった。(それは私だ)

ルビーのついたペンダントのオーダーを受けた際、「長さはどうされますか?」とお尋ねして驚かれた。
リングのようにサイズを聞かれるとは思っていなかったのだろうし、「普通で・・・」と言われることが多い。
基準がすっかり40cmという既製サイズになってしまっているのだ。

チェーンはもっとも手軽にできるオーダーなのだから、自分の体型にあった、そして自分をきれいに見せる長さをぜひ見つけてほしいと思う。
長めのネックレスを首にかけ、後から少しずつ引っ張ってはセロファンテープで固定する・・・といった、滑稽な方法で長さを決めていくのだが、鏡の前の依頼人は、襟との重なり具合や、ルビーの位置を想像しながら、「もう少し上・・・」「やっぱり2cmくらい下」と真剣だ。
そして「出来上がりが楽しみです」とアトリエをあとにされた。

私は、ペンダントは43cm、ブレスレットなら17cmと、決めている。