「はじめてのダイアモンド」

 

一年間無遅刻無欠席の皆勤賞を取ると、ダイアモンドがもらえるというのが、母校の慣わしだった。
どうせたいした物ではないだろうと、これが目的ではなかったのだが、わけあって一日も休まずに登校した私に、一粒のダイアモンドが手渡された。
華奢なチェーンをつけたプチペンダントにしようとか、小指のリングもいいな〜などと、あれこれデザインを考えたものだったが、まだ学生だった私に加工代が捻出できるはずもなく、プラスティックのケースに入れられたまま、数年が過ぎた。

業界で仕事をするようになって以来、自分の作品用にと買い集めてきた宝石を、紙の上に並べてアイデアを練るのが習慣になっていたある日、数個のダイアが偶然にもきれいなグラデーションをつくって並んだのを見た。
スターサイズの小さな物から0.2ctまでの大きさで、2個ずつあるものもある。
存在感、全体のバランス、そしてコストを計算した上で、ピアスを作成することにした。
直径2.7mmからはじまる4サイズの石を小さい方から下に並べて繋げた、全長2.6cmのピアスだ。
メインストーンにはなれなかったが、今もなお私の耳で輝やき、他の3石を軽やかに揺らしている。

地球上のダイアモンドを全人口に振り分けると、一人当り約0.5ctだという。
私は仕事柄もあって、それより遥かに多くを所有しているわけだが、思いが込められた唯一のダイアモンドが、一番上に留められた小さな小さな一粒なのである。